ドクン、と大きく波打つあたしの胸。
聞いてはいけないものを聞いたと、反射的になぜか感じた。
この場から早く離れなくちゃ。
そう思うのに、両足が床に貼りついたように離れない。
「……もういい!」
乱暴にカーテンが開かれ、眉をつり上がらせた女の人が出てくる。
その人はドアの前で立ちすくむあたしを見つけると、驚いたように足を止めた。
見るからに上級生という、大人っぽい外見。
ほどけたセーラー服のリボンが妙に生々しい。
異様な空気に包まれた保健室で、あたしは視線を泳がせた。
「あ、あの、ごめんなさ……」
「莉子?」
カーテンから顔を出したアキが、あたしの名前を呼ぶ。
すると女の人は、ピクッと眉を動かした。
「アキが女の子を名前で呼ぶなんて、めずらしいじゃない」



