しれっとした顔で何をふざけたことを……!
一瞬でもこんなやつに見とれたあたしが間違いだった。
やっぱりこいつは図々しくて偉そうなだけの、性悪男だ。
「変なこと言わないでください。あたしはただ、上着を返しに来ただけで――」
「って、何も持ってねーじゃん」
「え……? あぁっ!」
しまった。
完全に真由ちゃんのことを忘れていた。
「もう~、ビックリしたよ!
莉子ちゃん、いきなりどっか行っちゃうんだもん」
「ごめん! 本当にごめんなさい」
結局あのあと、追いかけてきてくれた真由ちゃんと無事に合流。
彼女は最初怒っていたけれど、“憧れの月島先輩”がここにいることに気づいたとたん、顔を赤く染めて上機嫌になった。



