ノブさんはふと真面目な顔になって言った。
「だいたいの事情はサヨから聞いてるから、雇うことに問題はありません。
ただ僕は大人のひとりとして、本当に君のために良くないと思ったときには、注意させてもらうからね」
「はい……」
「じゃあ明日から、よろしく」
にこっと微笑んだノブさんに、あたしは深く頭を下げた。
世の中は
悪い人ばかりじゃない。
そのことを決して、忘れちゃいけないと思った。
あたしたちが家を出て、8日目。
この日、コンビニのバイトが休みだったあたしは、お昼近くに目を覚ました。
隣のベッドを見ると、サヨさんの姿はない。
今日は土曜日だけど、さすがにもう起きたんだろうか。
布団を畳んで寝室を出ると、玄関に男の人の靴があった。



