「言わねぇなら別にいい」
どこかに行こうとする健吾を見て、あたしの頭に嫌な記憶がよみがえる。
元北高の男たちに仕返しに行こうとした、健吾の姿。
……あの数日後にあたしたちは別れたんだ。
「待って、行かないで!」
歩き出す足にしがみついて叫んだ。
「あたしなら本当に大丈夫だからっ」
「お前が大丈夫でも俺の気がすまねぇんだよ!」
「やめてってば!!」
怒鳴られてもひるまずに言い返すと、健吾の足が止まった。
あたしは涙で濡れた目を見開き、健吾をしっかり見つめる。
「お願い……やめて。そんなことしたら一緒にいられなくなっちゃうよ……」
あたしたちは今、問題を起こすわけにはいかないんだ。
理不尽な目に合っても、声を上げずに耐えるしかない。
それが、自分で選んだ道なんだから。



