不思議そうな顔であたしを見るお客さんの横を、必死で走り抜ける。
何も考えられない状態でとにかくマンションにたどり着き、
部屋に入ったとたん、涙がどっとあふれた。
……怖かった。
気持ち悪かった。
悔しかった。
そして何よりショックだった。
ひそかに描いていた未来が、ガラガラと崩れていく。
15歳が家を出て暮らしていけるなんて、やっぱり考えが甘かった?
ついさっきまで抱いていた希望は、ただの夢だったの?
涙をペロペロなめてくれるケンを抱きしめ、あたしは泣き続けた。
目をつむるとさっきの光景がよみがえり、寒気がおさまらなかった。
そのとき、チャイムが部屋に鳴り響いた。
「健……吾?」
あたしはインターホンすら出ずに、玄関まで走りドアを開ける。
ひんやりした風と共に、あたしの目に飛び込んでくる健吾の姿。
「……健吾ぉっ」
なりふり構わず、その胸に飛び込んだ。



