なんか変だ――
そう思ったときには、すでに手首をつかまれていた。
乱暴に腕をひねり上げられ、痛みが走った。
「やっ……」
壁に打ちつけられる背中。
すぐ目の前には店長さんの体がある。
逃げ場のない恐怖があたしを襲った。
「やめてくださいっ」
「そんなこと言わないでよ。人の親切はありがたく受け取らなきゃ。ね?」
黒い笑顔に、身の毛がよだつ思いがした。
店長さんは脅えきったあたしに顔を近づけてくる。
健吾じゃない唇。
健吾じゃない手。
健吾じゃない声。
嫌だ、やめて……!!
――カタン。
とお店の方から物音がして、一瞬、店長さんの力が弱くなった。
あたしは腕を振りはらい、部屋を飛び出した。



