LOVE and DAYS…瞬きのように


「そいつ、昔から親父の会社で働いてた男でさ。

俺に浮気を見つかった母さんは、“寂しかったから”って言い訳みてぇに繰り返してた」
 


それを聞いたあたしの脳裏に、いつかの健吾の言葉が浮かんだ。



――『寂しいとか孤独だとか、そんな感傷で自分を甘やかしてるやつを見ると虫唾が走る』
 

あの言葉の裏には、複雑な想いがあったんだろうか。



「お父さんは、そのことは……?」

「さあ。どうせ興味ねぇだろ」
 

侮蔑するような笑いを含んだ声が、悲しい。



「ちょうどその頃から、親父の俺に対する風当たりが強くなってきたんだ。

会社が安定したとたん、将来俺に後を継がせようと必死になり始めて。

俺の交友関係にまで口出してきたり……まあよくある話だけど、今さら何を言われても反発しか生まれなかったな。

それで、俺だけがあのマンションに戻った」


「陸上をやめたのも、その頃?」


「ああ、生活費のためにバイトしなきゃいけねぇから」