自分でも信じられなかった。
こんな大胆なことをするなんて。
心臓はありえないくらいドキドキしてるのに、それ以上に安心感がこみ上げる。
大好きな人が今、目の前にいるという安心感。
たとえそれが、何かから逃げ出して得たものでも。
健吾……
きっと困ってるね。
こんなワガママは今日だけにするから、どうか許して。
明日からはちゃんと強くなる。
健吾とずっといられるよう
絶対に強くなるから……。
「……ごめんね」
暗い部屋にあたしの声が響いた。
「何あやまってんだよ」
「だって、あたしがあんなこと言ったせいで、健吾まで巻きこんで。
すごく迷惑かけてるもん」
「そんなこと言うな。俺が一緒にいたいからいるんだ」
「でも、健吾の生活をあたしがめちゃくちゃに」
「莉子」
ふいに厳しい声がして、あたしは言葉を止めた。
「お前は、家に帰りたいと思うか?」



