「えっ、あの……」 「今、月島って言ってたよね?」 驚きで声が出ないあたしたちを、その人は人懐っこい笑顔で見下ろしてくる。 無造作に立てたオリーブ色の短い髪。 どこかで見たことがあると思ったら、昨日、月島健吾の乗ったバイクを運転していた人だ。 「健吾に用があるんだったら俺が呼んでやるよ」 「えぇっ!? ちょっと待って……!」 あわてるあたしをその場に置いて、彼はずんずんと廊下を進んでいってしまう。 そして 「健吾~。お客さん」 あの集団に声をかけた。