長く伸びた廊下のむこう。派手な髪色をした集団が見える。
その中に、ひときわ背が高くて目立つ男がいた。
「うん……そうだと思う」
うなずいたとたん、胃がヒクヒクッと痙攣した。
廊下の一角にたむろする彼らは、笑い声を上げながら何か話している。
当たり前のように中心にいるのは月島健吾だ。
大きな口を開けて、ヤンチャそうに笑っている彼……。
出会った時とも、バイクに乗っていた時とも違う、少年みたいな笑顔から、あたしは目が離せなくなった。
「ほら、莉子ちゃん。早く渡さなきゃ!」
真由ちゃんがあたしの袖をつかんで急かしてくる。
「でも」
「でもじゃなくて」
「緊張するし」
「そんなこと言ってたら月島先輩、どっか行っちゃうよ?」
「でも……」
「健吾がどうしたって?」
心臓が止まるかと思った。
声をそろえて悲鳴をあげ、振り返るあたしたち。
すると目の前に、大木のような長身の男が立っていた。



