真由ちゃんに会ったら、まず何から話そうか。

言いたいことが多すぎてまとまらないかもしれない。


だってこんな幸せな気持ち、今まで味わったことがないんだもん。


「おい、何ニヤニヤしてんだよ」
 

健吾はすでにバイクにまたがり、催促するような目であたしを見ていた。

あたしはあわてて携帯を閉じて、健吾の後ろに乗った。


「ちゃんとつかまれよ」
 

何気ない健吾のその一言が、またあたしを嬉しくさせる。


「……うん!」
 

隙間もないほど体を密着させると、バイクが走りだした。
 


少し冷たい風も、健吾と触れあっている今ならちょうどいい。 


秋晴れの空。

流れる街がやわらかい日光で輝いて、すべての景色が優しく見えた。
 




学校に到着したのは3時過ぎだった。

まだ授業中だ。

あたしたちは裏門から入り、駐輪場で時間をつぶすことにした。