健吾は自分の顔の前まであたしの手を持っていくと、傷の部分にそっと唇をあてる。
まるで王子様のキスのような仕草に、あたしは顔が赤くなった。
黙り込んでいると、健吾がクスッと思い出し笑いをした。
「薄々気づいてたけど、お前ってキレると怖いよな」
「え?」
「さっきすごかった。まわりの誰も止められねぇ状態だったぞ」
「……今さら言わないでよっ」
拗ねるあたしを、健吾はさらにからかってくる。
なつかしい、ちょっと意地悪なあの笑顔で。
しばらく笑ったあと、健吾はふいに優しい顔になって言った。
「でもまあ、あれでミサキも懲りただろうし。これからは下手に手ぇ出してくることもないだろ」
「そうかな」
「それにもしこんど何かあったら、俺が黙ってねぇ」
「うん……」
健吾の声は、不思議なくらいあたしを安心させてくれる。
もう気持ちを抑えなくてもいいんだ。
本当に、また健吾のそばにいられるんだ……。



