「うん。似合ってるよ」
満足げな真由ちゃんにつられて鏡を見ると、いつもより少しだけ大人っぽい顔をした自分がいた。
ほとんど黒に近いダークブラウンの髪を、肩まで伸ばしただけの平凡な髪型。
メイクを知らない眉や目は中学のころと同じなのに
唇だけが咲きたての花のように色づいていて。
なんだか、無性に気恥しくなってしまう。
「これならきっと先輩にも気に入ってもらえるね」
「気に入るも何も、上着を返すだけだし」
肩にかけた紙袋のひもを握りながら、あたしはつぶやいた。
そう……これを返せば、あたしと月島健吾をつなぐものはなくなる。
話すきっかけも、必要も、もうなくなるんだ。



