それは、初めて見る姿だった。
今までずっと、かたくなに口を閉ざしてきた健吾。
一方的すぎる別れの理由を、こんな風に健吾が言葉にするなんて、今が初めてだった。
あたしがひとりで辛かった日々、健吾も同じように感じてくれていた。
そう思ってもいいの……?
「健吾……。危険だなんて、あたしは思わないよ」
あたしは健吾に詰め寄り、両手で健吾のシャツをつかんだ。
暗闇の中でやっと見つけた光に、すがりつくように。
「危険とか安全とか、関係ない。
あたしは健吾のそばがいいの!
健吾が心配いらないくらい、あたし、強くなるから――」
「そんなことしなくていい」
遮るように言った健吾の言葉が、あたしの頭を真っ白にさせた。
そんなことしなくていい。
そんなことしなくていい。
エコーがかかったように何度もこだまする、その言葉。
さっき健吾がミサキに告げたのと同じ
終わりを意味する言葉。



