校門を出て駅までの道を歩いていると、あたしの横を一台のバイクが追い越していった。


「………」
 

あっという間に走り去り、見えなくなる背中。
 

もう、健吾があたしの横で止まってくれることはない。

そのことにも少しずつ慣れてきた、最近のあたし。
 


健吾、今日はバイトなのかな。

シンさんたちと遊ばずに帰ったってことは、きっとそうだね。
 

忙しくてもちゃんと寝てる? 

ちゃんとごはん食べてる? 


気になるけれど、あたしはもう健吾を心配する立場じゃない。
 

ただ遠くから彼を想い続けるだけ。

今は、それでもいい……。

 




あたしは家にまっすぐ帰らず、少し街をふらつくことにした。

読みたかった小説を買ったり、服屋さんをのぞいたり、それなりに気分転換にはなるもんだ。


夕方、歩きつかれたのでカフェに入り、カウンター席に座った。


ガラス張りの向こうには、放課後の学生でにぎわう繁華街。

楽しそうだな……と思いながら見ていると

思いがけない光景が目に入った。