あたしが今まで人を頼ることができなかったのは、人を信じていなかったから? 


あたし自身が周りとの壁を作っていたの?



「ま、ぼちぼち前に進んでいけばいいさ。
俺やミツルもいるんだし、時々ケツ叩いてやるから」


「あははっ。……ありがとう、アキ」
 

アキはぶっきらぼうに「あー、眠ぃ」なんて言って、床にごろんと寝転がる。


あたしも今日は学校をサボることにして、アキの部屋で、ひさしぶりにぐっすりと眠った。

 




それからあたしは、少しずつだけど前を向いていった。
 

お母さんとはギクシャクしたままだったし、健吾への気持ちも消えなかったけど

そんな自分を許してあげることにした。
 

学校では、たまに健吾たちを見かける。

そのたび、自然と目で追ってしまう。

しかたのないことなんだ。
 

やっぱり忘れるなんてできないよ。

そばにいられなくても、ずっと好きでいるくらいは、いいよね?
 



そして季節は秋になり、冬服のセーラーが肌になじんできたころ。



あたしは、たまたま街で見かけたある光景で、思いがけず真実を知ることになった。
 


健吾が言った「半分残ってる」の意味。
 
健吾がなぜ、かたくなにあたしを遠ざけたのか。

 



……健吾は

こんなにもあたしを大切にしてくれていたんだね……。