「莉子ちゃ~ん! こんな所で寝ないでよぉ」
真由ちゃんが困ってるのに、起き上がれない。
頭がフワフワして、まぶたが重い。
「莉子ちゃん……」
遠くなる真由ちゃんの声と、波の音が妙にきれいに重なり
それはまるで子守唄のようだった。
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誰かに背負われている、ということだけはわかった。
夢とも現実ともつかない、おぼろげな意識の中で
あたしは誰かにおんぶしてもらっていた。
なぜだろう、安心できる優しい背中。
その人が歩くたび、心地いい震動が体に伝わってくる。
温かくて。
すごく
すごく温かくて……。
「健吾……」
閉じたあたしのまぶたから
つぅっと一筋の涙が流れた。
あたしは力の抜けた腕をかすかに動かし、その人の服をキュッとつかんだ。
震えるあたしの手に、温かい手が重なった気がした。



