「最近はけっこうすれ違いが多くてさ。昨日電話がきて、“やっぱり友達に戻りたい”って」

「……そうだったんだ」
 

本人以上に暗くなるあたしたちに、ミツルは「でも」と続けた。


「たしかに今はフラれたばっかで悲しいけど、俺、後悔とかしてねぇし。
短い間だけでも彼女と付き合えて、マジいい思い出できたと思う。
だから全然へーき」
 

そう言って気丈に笑うミツルから、必死の強がりが伝わってきて、あたしは苦い気持ちになった。


“短い間だけでも付き合えて幸せだった”
 

あたしもそう思うべきだろうか。

素敵な思い出を健吾にいっぱいもらえて良かったと、思うべきなんだろか。
 

だけど、やっぱりあたしには無理なんだ。

思い出になんてしたくない。

健吾と一緒にいられないなら、温かい思い出なんて、よけいに辛いものでしかないよ……。



「てか、俺のことより莉子! 今日は健吾さんが来る日だろ?」

「あ、うん」

「ラブラブ見せつけてくれよ~。期待してるぜ」
 

ミツルの冷やかしを、あたしはあいまいな笑みで流した。