それは、完全な絶望だった。


健吾は何も言わずにハンドルを握りしめ、エンジンの唸り声とともに夜の闇に消えて行った。
 

泣き叫ぶあたしを残して。

すがりつくあたしを捨てて。

健吾は、行ってしまった。
 


健吾、健吾、健吾……! 

と何度も名前を呼んでいるのに、彼は戻っては来てくれない。


優しく抱きしめてもくれない。
 


どうして。


どうして……。