「そ、そんなこと言ったっけ? 空耳じゃない?」

とっさに苦しい言い訳をするあたし。

だって別に知り合いじゃないし、思わず名前を口にしちゃっただけだし。


「なーんだ、そっかぁ」

納得してくれた真由ちゃんに、あたしはホッと息をついた。


でも、なんか変だ。

どうしてみんな彼の名前を知っているんだろう。


「あ、あのさ」

「ん?」

「さっきの人って何者なの?」


なるべく自然に、興味津々だと思われないように、気をつけながら質問すると


「あ~、そっか。莉子ちゃんって地元が遠いんだもんね、知らなくて当然だよね」

「うん……?」

「月島健吾さん。この学校の3年生だよ」


信じられない。

同じ高校だったなんて、思いもよらない偶然にあたしは口をあんぐりと開ける。