まるで嵐が通り過ぎたような、束の間の出来事。

校庭にはもとに静けさが戻り、タイヤの跡が残るだけ。


廊下は相変わらず騒がしかった。

憧れの芸能人に会ったみたいに興奮気味の人。
便乗して騒ごうとする人。
興味なさそうな人。

そしてあたしのように、状況が飲みこめず唖然としている人。


「莉子ちゃん!」

いきなり、真由ちゃんに腕をつかまれた。

マスカラを塗り重ねた瞳をキラキラ輝かせ、彼女は言う。


「さっき月島先輩のこと“健吾”って呼んだよね!?」

「えっ」

「もしかして莉子ちゃん、先輩の知り合い!?」

「えっ、えっ」

「お願い! 紹介して!」


えぇぇ!? 
何なの、真由ちゃんまで。