「でもっ」
「ん?」
「なんでミツルの好きな子のこと、知ってたの?」
「ああ、アキが教えてくれた」
え?
「ミツルと真由の板挟みで、お前が苦しんでるってな。
あいつが他人のことに首突っ込むなんてめずらしいぞ」
アキさんが……
そうだったんだ。
だからさっき音楽室まで探しにきてくれたんだろうか。
「で、シンの知り合いがあの女子高にいるから、協力して連れてきてもらったんだ。
あんな風に目の前で、他の男に誘われてんの見れば、さすがのミツルも黙ってねぇだろ?」
「………」
なんか、ほんとにすごいよ。
あたしひとりで悩んでたときは、悪循環にはまる一方だったのに。
健吾たちが力を貸してくれたとたん、あっという間に抜け出せちゃうんだから。
嬉しくて、
そう、たしかに嬉しいんだけど、
まだ頭が混乱していて。
階段をはさんで立っている健吾が、夢の中の人みたいに思えるんだ。



