あたしは吸い込まれるように渡り廊下を見上げた。

そこにたたずむ健吾の、降りそそぐような優しい目が、はっきりとあたしを見つめていた。



「行っておいでよ」
 
真由ちゃんが言う。


「あたしの分も、莉子ちゃんに幸せになってもらいたいもん」

「真由ちゃん……」
 

ぽん、と背中を押され、一歩前に踏み出すあたし。

健吾に一歩、近づいた。

そして、もう一歩。
 

心臓が早鐘を打ち、あたしは走りだす。

人ごみをかき分け、健吾へと向かう。

地面を踏みしめるたびに、あふれる想いが体中を駆けめぐる。
 


校舎に入ると少しひんやり感じた。

渡り廊下のある2階に行くため、階段を上ろうとしたところで、あたしは足を止めた。


「健吾……」
 

階段の踊り場に健吾が立ち、こちらを見下ろしていた。
 

高い位置にある窓から差しこむ光が、彼の顔を照らしている。 


たった2日会わなかっただけなのに、ひどく久しぶりな気がして

胸も、頬も、まぶたも、焼けそうなほど熱くなった。