彼女は隣の友達に助けを求める視線を送ったりしていたけれど、
やがて決心がついたような顔をして、言った。
「……わたしでよかったら、ぜひ」
彼女がそう告げた相手は、ミツルだった。
静寂から一転。いっきに沸き返るギャラリー。
「フラれたじゃねーかよ」と白々しく嘆くシンさん。
さっきまでの乱闘騒ぎなんか忘れたみたいに、辺りはお祭りムードに染まっていく。
放心状態のあたしと、その隣の真由ちゃんを残して。
「……莉子ちゃん」
かすれた声で呼ばれ、隣を見た。
今にも泣き出しそうな真由ちゃんの瞳。
「ミツルの好きな子って……莉子ちゃんじゃなかったんだね」
「………」
「もしかして莉子ちゃん、あの子のことミツルから聞いてた?」
あたしはゆっくりと、首を縦に振った。
「真由ちゃん、ごめ――」
「ごめんっ」
言おうと思ったことを先に言われ、言葉に詰まった。
真由ちゃんは鼻の頭を真っ赤にして、必死で涙をこらえている。
「あたし、事情も知らずに莉子ちゃんを疑って……あんな噂を信じて、本当にごめん」
真由ちゃん……。
今、一番つらいのは真由ちゃんのはずなのに、真っ先にあたしにあやまってくれるなんて。



