さらっと言う健吾に、あたしは一瞬、ぽかんとして
「……うんっ」
一応病人だということも忘れ、大きくうなずいた。
こんなに優しくしてもらえるなら、毎日だって、風邪をひきたいくらいだよ……
そのまま保健室で放課後を迎え、カバンを取るために教室に向かった。
あの女子たちがまだ残っていたら嫌だな、と思いながら歩いていると
昇降口の方から、聞き覚えのある声が聞こえた。
「――莉子ちゃんは友達を裏切って、ミツル君と付き合ってるんです」
え?
自分の話をされているのだと気づいたあたしは、とっさに身を隠す。
この声……さっきのトイレの子だ。
数人が集まっているらしく、「そうそう」と同意する声も聞こえた。
いったい、誰に話しているんだろう。
その答えはわかっているくせに、まだ認めたくなくて、あたしは陰からそっとのぞく。
「だから莉子ちゃんは、先輩を騙してることになるんですよ」
「………」
怒りとショックが、同時にこみ上げた。
背の高い、すらりと伸びた後ろ姿。
顔は見えないけれど、見なくてもわかる。



