「俺、今まで学祭って出たことないからわかんねぇ」
「え? 昨年は?」
「ケンカがバレて停学中だった」
「じゃあ、1年のときは」
「寝すごして、起きたら夕方だった」
「何それ、ウケる」
ぷはっと声を出して笑った。
健吾はバツが悪そうに口をへの字にして、だけどすぐ、優しい笑顔になった。
「ま、そういうわけで、俺もけっこう楽しみにしてんだからな」
そう言って、掛け布団をあたしの肩まで上げてくれる。
「だからお前は体を早く治せ。わかったか?」
「……うん」
素直にうなずいたあたしの頭をなでて、健吾は立ち上がる。
そしてそのまま出ていくのかと思いきや
隣のベッドのカーテンを、勢いよく開けた。
「で、お前はいつまで盗み聞きしてんだ、アキ」



