「莉子っ」
脚立から下りてきたミツルが、あたしの肩に手を置こうとする。
それをとっさに払いのけ、あたしは立ち上がった。
「だ、大丈夫だから」
「でもお前、むちゃくちゃ顔色悪いじゃん」
さっき健吾にも同じことを言われたっけ。
だけど今回は、なんだか本当にフラフラする。寝不足だからそのせいだろうか。
「保健室、連れてってやろうか?」
「ううん、大丈夫。自分で行く」
あたしは画鋲を拾い集めてケースに入れると、心配そうなミツルを振り切って教室を出た。
保健室のドアを開けると、そこには誰の姿もなかった。
「……おじゃまします」
一応言ってみたけれど、返事は返ってこない。
そっと入っていくと、消毒液の匂いが鼻をついた。
つるつるした床は鏡のようで、上履きを履いていても足の裏が冷たく感じる。
「あの、すみません。先生――」
「留守だけど何?」
かすれた声とともに、ベッドを仕切っていたカーテンが開いた。



