真由ちゃんの瞳が、赤く充血していくのがわかった。
「なのになんで、莉子ちゃんがミツルと噂になってんの?」
「え……?」
「あたしだってあんな噂、最初は信じてなかったよ。だって莉子ちゃんには月島先輩がいるし、まさか裏切るわけないって思うじゃん。
でも、さっきの莉子ちゃんの態度見てたら、やっぱり何か隠してるようにしか見えないよ」
真由ちゃんは息つぎもせず、一気に言いきった。
あたしを責めるというよりは、傷ついている顔だった。
トイレの個室で水が流れる音や、はしゃぎながら廊下を走る男子の声、
全てがうるさく感じるほどの沈黙。
「ごめん。先に行くね」
逃げるようにトイレから出ていく真由ちゃん。
違う……
真由ちゃん、違うよ。
あたしはそう言いたかった。
でも、言えなかった。
真由ちゃんを傷つけるのが怖くて、ミツルとの3人の関係が壊れるのが嫌で。
真実から目をそらし、問題を後回しにしてきたあたしのせいだから。
そのとき、鏡に映るあたしの後ろで、トイレの個室のドアがふたつ開いた。



