今まで見たこともないような、満面の笑顔のミツル。

恋する幸せではちきれそうな表情は、ミツルも真由ちゃんもよく似ていて、なんだか苦い気持ちになった。


「そっか……よかったじゃん」

「おいおい、なんか反応薄いぞ」

「そんなことないよ」
 

あたしは無意識ににじみ出ていた戸惑いを隠し、笑顔を見せた。 
 

そのとき、ミツルの肩越しに真由ちゃんの姿を見つけた。
 
ちょうど登校してきたところらしく、カバンを肩に下げて裏門から入ってくる真由ちゃん。


ミツルはまったく気付かず、好きな女の子の話を続けている。
 

今、真由ちゃんがあたしたちを見つけて近づいてきたら、話を聞かれてしまう――


「あのさっ。あっち行って話さない?」

「……ん?」

「この辺、虫が多いし。ね?」
 

不思議そうな顔のミツルをなかば強引に連れて、真由ちゃんから見えない場所に移動した。


 


そんな姿をまさかクラスの子に見られていたなんて、知らなかったんだ。