あたしが身じろぎひとつできずにいると、健吾はおでこから手を離し、ぶっきらぼうな声で言った。


「早く治せよ。もうすぐなんだから」
 

目をぱちくりさせて、健吾を見上げるあたし。
 
もうすぐって、何が? 
と思っていると


「学祭。一緒にまわるんだろ?」


「………」
 

……えぇっ!?


「ほんとに?」

「嘘の方がいいか?」
 

ぶんぶんと首を横に振ると、健吾は満足そうな笑みを浮かべた。

そしてあたしのおでこに、優しくデコピン。


「痛っ。な、何すんの」

「それだけ元気なら大丈夫だな」
 

いつもの意地悪な笑顔で、健吾は教室に戻っていった。
 


あたしはしばらく中庭にひとりで立ち尽くしていた。

おでこがヒリヒリして、心臓はドキドキ。

触られた部分から健吾の体温が移ったみたいに温かい。
 

夢みたいだ。
本当に学祭を一緒に回れるなんて……。