まるで拗ねた子どもをなだめるように、何度も髪をなでてくれる。
その余裕が、よけいにあたしをみじめにする。
距離を感じてしまう。
「でも、まあ」
ふと、健吾がつぶやいたのであたしは顔を上げた。
「今お前が帰ったら、ちょっと寂しいかもな」
「………」
少し照れくさそうに天井を向く健吾の、きれいな顎のラインを、あたしはぼんやり見つめた。
今の言葉を頭の中で何度もくり返し、聞き間違いじゃないことを確認していた。
寂しい……って。
あたしが帰ったら寂しいって、言ってくれたよね?
あたしの存在を少しでも必要としてくれているの――?
しだいに、こみ上げてくる嬉しさが笑いになって漏れた。
「おい、笑うなよ」
頬をつねられても笑いはおさまらない。
クスクスと次から次にわき上がり、部屋を満たした。
いつの間にか健吾も笑っていた。
「あー、くそっ! やっぱ言わなきゃよかったな」
「もう聞いちゃったから遅いよ」
「うるせぇな!」



