「へっ? ちょっと……!」 目の前がタオルの白で覆われ、顔全体が健吾の匂いに包まれる。 いっきに体温が上昇した。この熱で髪も乾いちゃうんじゃないかと思うくらい。 「や、やめてよっ」 バタバタもがいて逃げるあたし。 健吾は人の気も知らずに笑っている。 その笑顔は意地悪なのに、瞳だけがすごく優しくて……。 胸がきゅっと苦しくなって、まともに顔を見られなかった。 だめだ、こんな状況はとてもじゃないけど心臓がもたない。 「あたし、帰る」 立ち上がろうとしたところを、腕をつかんで阻止された。