しばらくすると、急に雲行きがあやしくなってきた。
「雨、降りそうだな」
赤信号でとまったとき、ねずみ色の空を見上げて健吾が言った。
と同時に、冷たい水滴があたしの頬に当たった。
ぽつぽつと、空からまっすぐ降り落ちてくる雨。
今にも激しさを増しそうだ。
信号が青になるのを待たず、健吾はハンドルを切って方向を変えた。
どこに行くのだろう、と思っていると、3分もかからず古びたマンションの前に到着した。
くるっとふり返り、降りろと目でうながす健吾。
「あの、ここって……?」
「俺んち」
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