そんなあたしの心の声は、たぶんそのまま表情に出ていたんだろう。


健吾はあたしの顔をじっと見て、しばらく何か考えるように黙ると、

突然、パッとやんちゃな笑顔に変わった。


「予定変更だ。今日はサボる」

「えっ」
 

また、正直な声。
だけどこんどは、正直に嬉しい声。
 

健吾は笑顔のまま、偉そうな命令口調で言った。


「お前も付き合えよ」
 

こんなとき、有無をいわせない健吾の強引さが嬉しいんだ。


素直じゃないあたしでも、健吾のせいにしてうなずくことができるから。







「ねえ、どこに行くのーっ?」
 
バイクの後ろで、スカートがめくれないように押さえながら大声でたずねると、


「決めてねーっ」
 
そんな返事が返ってきた。
 

健吾の白いシャツが風を含んでパタパタ揺れる。

視界に留まらず、どんどん流れていく真昼間の町。

無責任な解放感が心地いい。