「ただの冗談だろーが」
 

健吾はそう言うけれど、あたしにとっては冗談じゃないんだよ。

だって、あたしは本当に会いに来たんだから……。
 

気まずいあたしは、口をへの字にしてうつむいた。


「拗ねるなって」
 

大きな手で髪をくしゃっとされて、ますます顔が上げられなくなる。

ムカつくけど、からかわれると胸のすみっこがくすぐったくなるんだ。


「俺、今から学校行くけど、お前は?」

「えっ」
 

健吾の言葉を予想していなかったから、思わず正直な声が出てしまった。
 

……戻っちゃうの? 

せっかく抜けてきたのに。