シンデレラは、ここにいます。〜嘘恋〜


空くんはコートに戻って

私は雨登くんにつかまって

体育館の隅に移動した



「大丈夫?」



雨登くんが

足首に保冷剤を当ててくれた



「うん
大丈夫だから、雨登くん戻って!」



「ここにいてもいい?」



「え?」



「心配だから…」



雨登くんが

私を心配してくれてる



「雨登くん、ありがと…」



雨登くんが額の汗を肩で拭いた


手を伸ばして雨登くんの額にタオルを当てた



「ありがと…」



「うん…」



ドキドキ…

ドキドキ…



緊張する



「雨登くん…」



「…ん?」



「クッキーおいしかったよ」



「食べたんだ…」



「うん…
せっかく雨登くんが作ってくれたんだもん」



「…」



無言



辛い



なんだろう

雨登くんといるの辛い



目の奥が熱くなって

タオルを顔に当てた



汗かな?



そんなに私

頑張ってないのに…



「雨登くん、もぉ、大丈夫だよ…
湿布貼ったら、平気だから…」



雨登くん

あっち行ってよ



辛い



辛いよ



「恋々、泣いてる?
そんなに痛いの?
病院行く?」



雨登くんが私を覗き込んできた



「大丈夫…痛くない…

だから…
もぉ…戻ってよ…」



足首じゃなくて

息をしたら胸が痛かった



雨登くんは黙ってコートに戻った



心配してくれたのに

ごめんね



顔に当てたタオルから

雨登くんの匂いがして

息をするのも辛かった