「なんか、この感じ
懐かしいね…」
「うん…思い出すね…」
「恋々は、何を思い出す?」
「んー…忘れた」
「思い出してねーじゃん!」
雨登くんが笑った
ホントは全部憶えてる
恥ずかしくて
忘れたって嘘をついた
私は嘘をついてばっかり…
1年前のこの部屋
同じ匂い
ちゃんと付き合ってなかったけど
あの時もドキドキしてた
「恋々…手のばして…
…
手繋ぎたい…」
ドキン…
布団から手を伸ばしたら
雨登くんが握ってくれた
「恋々、思い出した?」
「うん…」
ドキドキ…
ドキドキ…
あの時は
指先が触れるだけ
握るでも繋ぐでもなくて
やっと触れた指先が私たちみたいだった
「あの時…
恋々に言ってないことがあるんだ」
「…ん?なに?」
「恋々が先に寝て…
オレ寝れなくて布団くっつけた
…
それで恋々の顔見てたら
キスしたくなって…
…
キスした」
「え!」
「ごめん
初めてだったとか…?」
「初めてだった…
…
でも…
結局その時してなくても
雨登くんが、初めてだったし…」
「なんだ…」
「なんだ…って…
なに?」
「オレも恋々が初めてだったから
よかったな…って…」
「嘘!
だって雨登くん彼女いたって言ってたし!」
「彼女はいたよ…何人か…
…
だけど、キスしたくなったのは
恋々が初めてで…
…
恥ずかしいから、もぉ、言わない」
私も恥ずかしいよ
雨登くん
繋いだ手が熱くなった
「オレ、嘘つかないから…
今までだって嘘ついてないよね?」
「うん…そーだね…」
今日も雨登くんは
嘘つかないのかな?
布団から出ないって約束
守るの?
雨登くんと繋いだ手
雨登くんが強く握り直した
ドキン…
手だけしか繋がってないことが
もどかしいみたいに
雨登くんの手は
私の手を抱きしめるみたいに
愛おしく包んだ
「恋々…好き…」
この1年で何回言ってくれたかな?
2年目は
もっと言ってね
「雨登くん
1年間ありがとう」
「なに?そのお別れぽい言葉」
雨登くんが笑った
「雨登くん、2年目も大好き」
「うん
2年目も3年目も
恋々のこと、もっと好きになってたい
…
嘘にならないようにするね」
雨登くんが握ってた私の手を
ギュッてした
「恋々…」
ドキン…
雨登くんの甘えた声に
ドキドキした
「恋々…
オレは約束どおり布団から出ないけど…
恋々は出てもいんだよ」
「え…」
「恋々…」
雨登くんに呼ばれて
近くに行きたいと思った



