公園のベンチをひとりで立った
泣きすぎてよく前が見えない
いつの間にか周りも暗くなってた
「恋々…」
行こうとしたら雨登くんも立ち上がった
「恋々…
…
ホントは…
…
大好きだった」
え…
雨登くんの声は
優しくて…
震えてた
「雨登くん…」
「恋々…
サヨナラなんて…言うなよ…
…
行かないでよ…
…
勝手に行くなよ…
オレ、まだサヨナラ言ってない
…
…
2ヶ月の約束
守れないのは…オレだった
…
ごめん…
…
恋々…
…
サヨナラなんて…ヤダ…
…
オレ…
…
恋々のこと
好きになった
…
本気で好きになった
…
…
違う…
ホントは最初から好きだった」
雨登くん…
「かわいい名前だね…って
話しかけた時から
きっと、好きだから話し掛けた
…
彼女がいたから卒業したかったのも
ホントだけど
恋々のこと本気で好きになってる自分がいて
彼女とも別れた
…
ちゃんと告白して
一緒に卒業して
ホントに恋々と付き合いな…って思ってたら
恋々から告白してくれた
…
恋々に告白されて嬉しかったけど
オレが頼んだから告白してくれたんだな…って
…
そしたら
ホントのカップルにはなれないんだな…って
…
恋々は2ヶ月だけのつもりなんだな…って
…
少し哀しかった
…
嘘の交際が始まって
恋々に本気になってる自分に
歯止めが効かなくて焦った
…
嘘のつもりが
どんどん嘘じゃすまなくなって
辛かった
…
毎日電話したのも
ホントに恋々の声が聴きたかった
…
毎日会いたかったけど
仕事でなかなか会えなくて…
…
辛くて
もぉこんな嘘やめたいな…って
思うこともあった
…
オレがあんなふうに頼まなければ
恋々と普通に恋愛できたのかな?って
すげー後悔した」
私と…?
恋愛…?
「でも結果無理だった
…
結局、今、恋々にフラれたし…
…
当たり前だよね
オレ、バカだったわ
…
…
恋々、ありがと…
…
一緒に卒業してくれて
…
オレの片思いに付き合ってくれて
…
…
恋々、ごめん…
…
…
恋々、ごめん
オレ、恋々が好きだよ…」
涙を拭って雨登くんを見たら
私にぶたれた頬が赤くなってた
雨登くんの目にも涙が溜まってた
違うかな?
私の涙かな?
ごめんなんて言わないで…
謝るのは私だよ
「ごめん…雨登くん…
…
痛かった…?」
雨登くんの赤くなった頬に
そっと手を添えた
さっきは悔しくて我慢できなかった私の手が
違う手みたいだった
「痛くないよ…
…
恋々の方が心配
…
ごめん…泣かせて…
ごめん…傷付けて…
…
辛かったよね
1番傷付けたくなかった」
雨登くんの大きい手が
震えながら私の頬を包んだ
「恋々…
今度はオレから告わせて…
…
オレのホントの気持ち
聞いて
…
…
今度は2ヶ月じゃなくて
ずっと…
…
ずっと…恋々といたい
…
好き…恋々…
…
大好き…
…
…
恋々…
オレのこと大キライだったら
この手でまた叩いてよ
…
そしたら…
そしたら、オレ諦める」
雨登くんの声は
変わらない
もぉ好きじゃないし…
そう言ったさっきも
ずっと恋々といたい…
そう言ってくれた今も
優しかった
「うん…
…
大キライ…雨登くん…
…
大キライ!
雨登くんなんて、大キライ!
…
…
好きにさせないでよ…
…
嘘つき…
…
入学した時は好きじゃなかったのに
いつの間にか雨登くんが気になってて…
…
どーしたらいいかわかんなくて
辛くて…
…
早く卒業したくて、告白したの
…
2ヶ月だけの約束が
守れなくなりそうで…
…
必死に好きじゃないって
自分に言い聞かせながら
2ヶ月付き合った
…
辛くて…
楽しくて…
嬉しくて…
哀しくて…
悔しくて…
…
せっかく
大キライになったフリしたのに…
…
できないかも…
雨登くん…
…
叩けない
雨登くん…」
雨登くんの赤くなった頬を撫でた
「優しいね…
恋々って…」
雨登くんの言葉に
また涙が出た
「そんな叩き方じゃ…
オレ、わかんない
…
オレのこと
好きなのかな?って
勘違いするよ
…
オレは、好きだよ…
…
恋々…大好き…
…
もぉ、嘘つかないから…
本気で好きだから…
…
恋々と
まだ一緒にいたい
…
…
恋々…もぉ傷付けない
…
オレと本気で、付き合ってください」
「雨登くん…
…
私も
自分の気持ちに素直になっていいの?」
私バカみたいじゃない?
本気であの雨登くんが好きだなんて
みんなが大好きなあの雨登くんだよ
嘘だった恋に本気で恋してた私って
恥ずかしくない?
「うん…
恋々の気持ち、聞かせて…」
「雨登くん…
私もずっと一緒にいたいよ…
…
私、かわいくないし…
何もできないし…
何もないけど…
…
雨登くんのそばにいたいよ…
…
…
雨登くん、大好きだよ
…
雨登くんの…
雨登くんの本当の彼女にしてください」
素直に認めたら
スッて気持ちがラクになった
雨登くんの頬に触れてた私の手を
雨登くんが握った
涙で雨登くんが見えない
ずっと辛かった
認めちゃいけない気持ちが
ずっと邪魔してて
苦しかった
雨登くんも
辛かった?
「恋々…ありがと…
…
今日から、ずっとヨロシクね」
涙で雨登くんは見えないけど
雨登くんに包まれた
今度は2ヶ月じゃなくて
ずっとヨロシクね
好き
大好き
「雨登くん…大キライ…
…
好きすぎて…ドキドキして…
大キライ…」
「恋々…?どっち…?」
「嘘だけど…ホント…」
雨登くんが私の耳元で笑った
くすぐったくて
もっとドキドキした
「恋々…キスしてい?」
ドキン…
雨登くん
またからかってる?
「ヤダ…
…
泣いたから、顔グチャグチャ…」
「ヤダ?
それは、嘘?ホント?
…
泣いても、かわいいよ…
…
嘘でもホントでも…恋々が好き…」
ーーーーー
初めてのキスは
甘い味を想像してたのに
しょっぱかった
このキスは
嘘の味?
それとも…
たぶん
幸せの味
甘くてしょっぱい
あの時のクッキーの味みたい



