「恋々、2ヶ月ありがと…」
公園のベンチに座ったら
雨登くんの声が聞こえた
ありがと…
何にありがと？
私は泣いてるのに
隣から聞こえてくる雨登くんの声は
いつもと変わらなかった
きっと雨登くんは
なんとも思ってない
お互いに野いちご学園を卒業したかっただけ
ただそれだけのことだった
2ヶ月の約束
今それが終わる
最初から
そのつもりだった
泣いている私がおかしい
勝手に悔しがって
勝手に泣いてる
何が悔しいの？
わかってる
わかってるよ
勝手に雨登くんに本気で恋して
なんとも思ってない雨登くんに
ムカついてる
私だけ大好きだから
悔しくて辛い
「恋々…
…
オレ、2ヶ月楽しかったよ
…
ホント、ありがと…
…
これからは
それぞれ頑張っていこう
…
応援してる」
雨登くんの声が優しいから
余計涙が出る
もっと
ちゃんと振ってくれなきゃわかんない
わかってるけど
わかりたくない
それぞれ…って
それが別れの言葉？
私は雨登くんのこと
応援できるかな？
「恋々…
…
じゃあ…
最後の言葉、言ってもいい？」
最後の言葉
言われたら
ホントに最後になる
雨登くん
ホントにお別れだね
「恋々…
…
オレたち
別れよっか…
…
もぉ好きじゃなくなった」
うん…
ただ私が頷けばそれで終わるのに
終われない
聞き分けの悪い涙が
下に落ちる
「恋々…
…
ていうか…
最初から好きじゃなかったわ
…
ありがとね
一緒に卒業してくれて…
ホントに恋々いて助かった
…
2ヶ月付き合ったフリなんて
こんな都合のいい子
他にいないよね
…
SNSのフォロワーも増えたし
言い方悪いけど
お互い仕事のためによかったよね
…
恋々もそぉ思ってるよね？」
悔しくて
切なくて
辛くて
大キライ
優しくて
愛おしくて
いっぱい思い出あるのに…
大好きだよ
震える手をギュッと握った
雨登くんはもぉ握ってくれない
雨登くんに好きじゃないって言われたのに
まだどこか期待してる
「恋々、なに泣いてんの？
最後にキスしとく？
恋々がしたかったら…」
パン！
我慢できなくて
雨登くんの頬をぶった
雨登くんは
頬を押さえて下を向いた
「大キライ！
…
私だって最初から…
ぜんぜん好きじゃなかったし…
…
ただ野いちご卒業したくて
告白しただけだもん！
…
からかわないで！」
ホントは
告白した時も好きだった
好きで好きで辛かった
雨登くんが好きだから
空くんを選ばなかった
雨登くんを選んだ
雨登くん、好きです
あの言葉は
本気だった
嘘の恋のつもりが
付き合ってるフリのつもりが
どんどん好きになって
大好きで
どんどん雨登くんの存在が大きくなって
毎日雨登くんを待ってる自分がいた
2ヶ月だけの約束が
今日で終わることが
ホントは
哀しくて
切なくて
やるせない
嘘のキスなんて
バカにしてる
雨登くんてそんな人だった？
「サヨナラ…」
ホントは
大好きで
別れたくなくて
明日も待ってたい
明日は
もぉ
雨登くんはいない
雨登くんの声は聴けない
