彼はこれでも生徒指導の主任を担っていて、彼の生息地は専らこの部屋だと噂だ。
必要なものや私物は全てここにあるのだろう。
慌ただしい音が響き、その音がピタッと止まった時、彼は私の方へ体を向けていた。
「んじゃっ、あとは頼んだ!相川!
終わったら帰っていいからな〜」
警察学校の敬礼でも練習しているのかと思うくらいに、指を揃えて額に当てる。
最後の一声はこの部屋を出ながら、
ある悪役の負け台詞のように吐いていった。
先生が出ていき、騒がしい音と引き換えに、
静寂が残る。
ふぅ、と一息をつく。
テーブルいっぱいに積まれた紙束を、ぐるりと見回す。
よし、頑張ろう。
先生の指示通りに紙を集めて、まとまったものを右手のホッチキスでパチンコと留めた。
完成したそれを、左手の空いてるスペースに置く。
—— コンコン
あれから5分後、20部くらい完成しただろうか。
そんな瞬間、扉のノックが鳴り響く。
山ちゃんがノックなんてするはずないし、他の先生方も会議中であろう。
十中八九、生徒だ。
「はい」と返して、作業を止める。
すると焦茶色のドアがゆっくり開き、
キャラメル色が隙間を埋めた。
扉の向こうにいた人物の全貌が明らかになる。
「失礼しま、、あ」
彼も予想していなかったのか、お互いに数秒ほど固まってしまう。
「ミズキ、なんでここに居んの?」
私の名前を呼んで、化石状態からいち早く回復した彼が言った。
なお、私はまだ解けていない。
「山本先生に用があったんだけど、、居ないみたいだな」
チラリと視線を動かすだけで全体が見渡せる小さな部屋だ。
お目当ての先生がこの部屋にいない、ということが判明するのに時間はかからなかった。
