9月某日。


ジメジメした空気が、徐々に涼しい風を運んでいた。

晴れのち曇り。


少し灰色がかった空は、決して快晴とは呼べない。

そんな日の始まり。




—— ピピピピッ



早朝5時。


どこにでもある一戸建ての家。

二階右端の部屋に住まう住人の朝は早い。


太陽が少しずつ顔を出し、カーテンの隙間から光を放つ。



「ん〜〜っ、」


気怠さの残った身体をぐーっと伸ばし、
ベッドの中から這い出る女の子。


スマホのアラームを手早く止めて、同階の洗面所へ向かう。

今年で三年目ともなるこのルーティンに、
狂いはない。


頭を起こすために、水でパシャパシャと洗顔を始める。


その途中で現れる人物も、日常通り。



「ふわあ〜。お、早いな。ミズキ」



盛大な欠伸をして、洗面所のドアから顔を出す彼は、私の父だ。

40代半ばの、年相応の体型。

昨日は日曜日で休みだったせいか、
中途半端に伸びた顎髭が目立つ。



「おはよう、お父さん。今日から学校だよ。間に合わないじゃん」


タオルで顔を拭きながら、未だ眠そうな我が父に挨拶する。


「そうか、昨日で夏休みも終わりか。
あっ、母さん起こさないと」

自身の顎髭をジョリジョリと触りながら、突然思い出したように寝室に舞い戻る。