35歳になった親たちのある1日。
藤原真央は休日のバレンタインデーに朝からガトーショコラを焼いていた。
今日は普段働いている私を気遣って息子の海斗を
放課後預かってくれている 森 一家を招待している。
颯真と千歌は私達の結婚から2年後に結婚し
翌年 杏那ちゃんが生まれた。
海斗と丁度2歳違い。
「杏那が海斗君を好きで海斗君が居ると杏那がご機嫌だから来てくれると助かる~」
と言ってくれる千歌には感謝しかない。
その言葉に甘えて小学校に上がってから学童を利用しないですんでいる。
千歌は一人も二人も一緒と言ってピアノも空手も二人一緒。
母親が働いていると送迎の伴うお稽古は難しいのに習えているのは颯真と千歌のお陰。
なので月に2回ほどは我が家でおもてなしを兼ねての食事会をしている。
(それは建前で本当は千歌と女子会気分)
私は何十年もバレンタインデーにはガトーショコラを翔に食べて貰っている。
翔は年を重ねるごとに甘いお菓子を食べなくなってきたがこれだけは
「今年も、美味しいガトーショコラを有難う」と言って食べてくれる。
私達は口にはしないけれど、大学最後のバレンタインデーの苦い思い出を心に刻み、
改めてお互いを大事に思うようにしている。
お互い働いて色々な人と出会う。
その中には既婚だと知っていてもアプローチしてくる人が居る事も社会に出て知った。
翔がカッコ良く年齢を重ねている事は妻としては誇りに思うけれど心配になる時もある。
それは多分翔も同じ・・だから私達はこの日に思いを馳せる。
あの時は本当に辛かった。
「ピピピ」オーブンの音に思い出から現実に戻る・・
「ローストポーク 上手に焼けたかな」と口にしながら竹串をローストポークに刺す。
刺した所から透明な肉汁が出てきて焼けている事を確認し次の作業に取り掛かる。
「お母さん、これ何?」
次にオーブンに入れようとしているタルト皿を見ながら小学二年生の海斗が聞く。
「これは人参のキッシュよ」
「にんじん・・」
「どうしたの?」
「杏那、人参嫌いなんだよ」
「知っているよ。でも、このキッシュは大丈夫。」
「でも・・」
「海斗 杏那ちゃんの嫌いなものを食べさせたくない気持ちは解るけれど、
形を変えたら食べられるかもしれないでしょ?
守るつもりで可能性の芽を摘んでしまうのは本当の優しさでは無いとお母さんは思うよ」
「本当の優しさ?」
「そう、人参が嫌いだから食べさせない・・
それは一見優しく感じるけれど人参には人参しか持っていない栄養もあるのよ。
他で取れると言うかもしれないけれど、それも嫌いだったら?
そうしたらそれも排除するの?
そんな事をしていたら段々食べられる物が狭まると思わない?
それが食べ物だけでは無くて他の事もそうならない?」
「・・・」
「だから少し形を変えてチャレンジして食べられたら
それは杏那ちゃんの自信に繋がらないかな?」
「杏那ちゃんは空手も頑張って型を覚えて海斗と同じスピードで進級しているよね。
ピアノだって海斗と発表会で連弾する為に凄い努力をしていると思うよ。
海斗が簡単に出来る事も2歳下の小さな手には難しい事もあるのに
ミスしないで弾いているよね。」
海斗は首をコクコクと縦に振る。
「先回りしてしまうよりは出来るように、
頑張れるように一寸手助けしてあげたり見守ったりする方が優しいと思うよ。
見守るのは忍耐も必要だから人は自分がやった方が早い綺麗と思って
手を出すけれどそれは自己満足よ。」
「自己満足?」
「そう、やってあげた・・と言う気持ちで自分だけが気持ち良くなるの」
「じゃあ僕は杏那が食べられたら凄いと褒めてあげるだけでも良いの?」
「そうだよ。誰だって凄い。と褒められたら嬉しいのよ」
「誰でも?お母さんも?」
「そう、大人のお母さんも嬉しいよ」
「そうかだからお父さんは何時もお母さんの料理は凄く美味しい。綺麗。と言うんだね。」
私は息子の言葉に真っ赤になりながら
「そう」とだけ答え慌てて鍋にブレンダーを入れて撹拌した。
「それは?」
「これは人参のポタージュ」
「また ニンジン・・」
「海斗、少し味見してみて」
「あ、全然ニンジンだと解らない」
「でしょう?もしこれを杏那ちゃんが飲んだら沢山褒めてあげて」
「うん。沢山褒める」
「おはよう。誰を褒めるのかな?」
「お父さんおはよう 杏那がお母さんの作ったニンジン料理食べたら褒めるの・・」
「そうか 杏那ちゃんは海斗を慕っているからね きっと凄く喜ぶよ。
颯真達は何時に来るの?」
「11時には来てって話してあるからソロソロかな?」
ふと時計を見ると後15分ほどだった。
少しスピードあげないと間に合わない・・・
「真央、何か手伝う事ある?」
「有難う、昨日も遅かったでしょう?疲れてない?」
「大丈夫。」
「じゃあ、海斗と一緒にテーブルにカトラリーを並べて貰おうかな」
翔と海斗が一緒に作業しているのを見ると心がホッコリする。
海斗は顔立ちが翔とソックリで学校でも女の子に人気があるとママ友から言われる。
母としては複雑な心境になる。
モテないよりはモテた方が良いが私の息子が私だけの息子では無いような寂しい感じになる。
子供の成長はあっという間・・
三人で一つのベッドで寝ていたのに小学校に上がる頃から又夫婦二人のベッドになった。
それは翔と二人でピッタリとくっついて寝られる嬉しさと
小さな温もりが成長していく寂しさも味わい海斗が一人で寝た夜は翔の腕の中で涙した。
その夜翔は私が寝るまで頭を撫でていてくれた。
藤原真央は休日のバレンタインデーに朝からガトーショコラを焼いていた。
今日は普段働いている私を気遣って息子の海斗を
放課後預かってくれている 森 一家を招待している。
颯真と千歌は私達の結婚から2年後に結婚し
翌年 杏那ちゃんが生まれた。
海斗と丁度2歳違い。
「杏那が海斗君を好きで海斗君が居ると杏那がご機嫌だから来てくれると助かる~」
と言ってくれる千歌には感謝しかない。
その言葉に甘えて小学校に上がってから学童を利用しないですんでいる。
千歌は一人も二人も一緒と言ってピアノも空手も二人一緒。
母親が働いていると送迎の伴うお稽古は難しいのに習えているのは颯真と千歌のお陰。
なので月に2回ほどは我が家でおもてなしを兼ねての食事会をしている。
(それは建前で本当は千歌と女子会気分)
私は何十年もバレンタインデーにはガトーショコラを翔に食べて貰っている。
翔は年を重ねるごとに甘いお菓子を食べなくなってきたがこれだけは
「今年も、美味しいガトーショコラを有難う」と言って食べてくれる。
私達は口にはしないけれど、大学最後のバレンタインデーの苦い思い出を心に刻み、
改めてお互いを大事に思うようにしている。
お互い働いて色々な人と出会う。
その中には既婚だと知っていてもアプローチしてくる人が居る事も社会に出て知った。
翔がカッコ良く年齢を重ねている事は妻としては誇りに思うけれど心配になる時もある。
それは多分翔も同じ・・だから私達はこの日に思いを馳せる。
あの時は本当に辛かった。
「ピピピ」オーブンの音に思い出から現実に戻る・・
「ローストポーク 上手に焼けたかな」と口にしながら竹串をローストポークに刺す。
刺した所から透明な肉汁が出てきて焼けている事を確認し次の作業に取り掛かる。
「お母さん、これ何?」
次にオーブンに入れようとしているタルト皿を見ながら小学二年生の海斗が聞く。
「これは人参のキッシュよ」
「にんじん・・」
「どうしたの?」
「杏那、人参嫌いなんだよ」
「知っているよ。でも、このキッシュは大丈夫。」
「でも・・」
「海斗 杏那ちゃんの嫌いなものを食べさせたくない気持ちは解るけれど、
形を変えたら食べられるかもしれないでしょ?
守るつもりで可能性の芽を摘んでしまうのは本当の優しさでは無いとお母さんは思うよ」
「本当の優しさ?」
「そう、人参が嫌いだから食べさせない・・
それは一見優しく感じるけれど人参には人参しか持っていない栄養もあるのよ。
他で取れると言うかもしれないけれど、それも嫌いだったら?
そうしたらそれも排除するの?
そんな事をしていたら段々食べられる物が狭まると思わない?
それが食べ物だけでは無くて他の事もそうならない?」
「・・・」
「だから少し形を変えてチャレンジして食べられたら
それは杏那ちゃんの自信に繋がらないかな?」
「杏那ちゃんは空手も頑張って型を覚えて海斗と同じスピードで進級しているよね。
ピアノだって海斗と発表会で連弾する為に凄い努力をしていると思うよ。
海斗が簡単に出来る事も2歳下の小さな手には難しい事もあるのに
ミスしないで弾いているよね。」
海斗は首をコクコクと縦に振る。
「先回りしてしまうよりは出来るように、
頑張れるように一寸手助けしてあげたり見守ったりする方が優しいと思うよ。
見守るのは忍耐も必要だから人は自分がやった方が早い綺麗と思って
手を出すけれどそれは自己満足よ。」
「自己満足?」
「そう、やってあげた・・と言う気持ちで自分だけが気持ち良くなるの」
「じゃあ僕は杏那が食べられたら凄いと褒めてあげるだけでも良いの?」
「そうだよ。誰だって凄い。と褒められたら嬉しいのよ」
「誰でも?お母さんも?」
「そう、大人のお母さんも嬉しいよ」
「そうかだからお父さんは何時もお母さんの料理は凄く美味しい。綺麗。と言うんだね。」
私は息子の言葉に真っ赤になりながら
「そう」とだけ答え慌てて鍋にブレンダーを入れて撹拌した。
「それは?」
「これは人参のポタージュ」
「また ニンジン・・」
「海斗、少し味見してみて」
「あ、全然ニンジンだと解らない」
「でしょう?もしこれを杏那ちゃんが飲んだら沢山褒めてあげて」
「うん。沢山褒める」
「おはよう。誰を褒めるのかな?」
「お父さんおはよう 杏那がお母さんの作ったニンジン料理食べたら褒めるの・・」
「そうか 杏那ちゃんは海斗を慕っているからね きっと凄く喜ぶよ。
颯真達は何時に来るの?」
「11時には来てって話してあるからソロソロかな?」
ふと時計を見ると後15分ほどだった。
少しスピードあげないと間に合わない・・・
「真央、何か手伝う事ある?」
「有難う、昨日も遅かったでしょう?疲れてない?」
「大丈夫。」
「じゃあ、海斗と一緒にテーブルにカトラリーを並べて貰おうかな」
翔と海斗が一緒に作業しているのを見ると心がホッコリする。
海斗は顔立ちが翔とソックリで学校でも女の子に人気があるとママ友から言われる。
母としては複雑な心境になる。
モテないよりはモテた方が良いが私の息子が私だけの息子では無いような寂しい感じになる。
子供の成長はあっという間・・
三人で一つのベッドで寝ていたのに小学校に上がる頃から又夫婦二人のベッドになった。
それは翔と二人でピッタリとくっついて寝られる嬉しさと
小さな温もりが成長していく寂しさも味わい海斗が一人で寝た夜は翔の腕の中で涙した。
その夜翔は私が寝るまで頭を撫でていてくれた。



