こんなにギクシャクする前に立てていた二人のスキー旅行。
自分の夏海に対する思いを込めて
2日目のディナーにホテルのレストランを予約した。
ケーキに思いを込めたメッセージをオーダーして・・
これで又元の二人に戻れると・・
二人の長い歴史が少しの綻びでは崩れないと縋っていた。
そんな俺の思いを他所に新幹線の中からギクシャクしていた。
殆ど会話も無く、上の空の夏海に最初は話しかけていたが
段々虚しくなりスマホのゲームアプリを立ち上げて時間を潰すしかなかった。
幸か不幸かスキーは個々でも楽しめるスポーツ。
お互い微妙な距離を保ち楽しんだが、
食事の時は一生懸命話しかけるが新幹線の中と同じ状態だった。
多分、凄く俺は焦っていたのだろう・・・
その夜、温泉から帰ってきた夏海をベッドに押し倒した。
若くて浅はかな俺は抱いてしまえばどうにかなるとは思っていた。
キスを落としても応える事の無い唇。
熱のこもった手で夏海に触れても応える事の無い身体、
そしてとどめは死んだような目で俺を見つめて顔をそらして
「早く終わらせて」と云わんばかりの雰囲気に
自分の中で何かが冷めていきベッドに夏海を残したまま部屋を出た。
バーラウンジでお酒を飲みながら
「もうダメかもしれない」
と小さく呟くとその言葉がしっくりしたような気がした。
そのままスマホを取り出し、明日予約したレストランに電話し
ディナーの予約を取り消した。
今の俺達には一番相応しくないシチュエーションだ。
これ以上惨めになりたくなかった。
暫く時間を潰して部屋に戻ると彼女は背中を向けてベッドに寝ていた。
俺も静かに自分のベッドに入り彼女に背中を向けて寝た。
一人で寝ている布団が温かくなってきた時に涙が出た・・
その時に俺も傷ついていたんだ、温もりや優しさに包まれたかったと・・・
翌朝も前日と虚しいほど変わらなかった・・
心を置いてきた彼女との挨拶程度の会話・・
一緒に居るのに一人で居るより孤独だった。
本当だったら素敵なディナーを食べながら・・
と色々考えていたのに・・・
限界だった。
夏海がお風呂に行っている間に荷造りをし
宅配の手続きを終えベッドに転がりながら夏海に話す言葉を選んでいた・・
未だ、迷いがあった・・
もしかしたらって・・
でも、一度離れてしまった心は戻らない事も知っていた。
温泉から帰ってきた彼女に
「お帰り」と声を掛けると
「うん・・ただいま・・」
やっぱり繋がらない会話に
「夏海、俺 明日朝帰るわ・・」
「え・・」
「夏海は予定通りスキーしてからの新幹線にしな」
「・・・・」
「じゃ、俺寝るわ」
と昨日の彼女の様に背中を向けて寝る。
そんな状態で熟睡できるほどの強メンタルを持ち合わせているわけないので
殆ど眠らないで朝を迎えた。
静かな寝息を立てている彼女を起こさないように
静かに身支度を整え部屋を後にする。
部屋の扉がパタンと後ろで音を立てた時に本当に戻れないと実感した。
約7年の恋が終わった音だった。
東京に戻り一番に翔に電話する。
俺のただならぬ気配にバイトが終わり疲れているのにコンビニの袋に
沢山の缶酎ハイやおつまみを買って来てくれた。
「夏海と終わった」と口にすると
「そっか・・」とそして
プシューとプルトップを開けた缶酎ハイを差し出された。
慰めの言葉も無いけれどそこに居てくれた。
ただ、俺の愚痴を聴いてくれた。
俺の頬から伝った涙を拭うと翔も目が赤かった。
何時かあの時は辛かったな~と言える日が来るのだろうか?
簡単に気持ちを切り替えるには7年は永すぎた。
翔は「俺はお前の友達だから何があろうがお前の味方だ」
翌朝帰る時にボソっと口にして帰って行った。
この別れは辛いが翔が言ってくれた一言で乗り越えられると思った。



