身代わりでも傍にいたかった


社会人二年目のクリスマスに真央にプロポーズし、

三年目の6月に藤原真央になってくれた。

出産を経ても真央は大好きな会社で働いていた。

大変なことも多々あるとは思うが
自分の目指していた道に進み歩んでいる彼女は嬉々としていた。

逆に夏海は入社二年もしないうちに退職をしていた。
誰にも退職を相談する事も無く
退職当時は同期会時には話が出ていたが
暫くすると皆の記憶から消えたように名前も挙がらなくなった。

一応、真央にも退職を知った時に話したが

「そう」
と言っただけだった。

真央が夏海に対してどのような感情を抱いているかは解らないが
後にも先にその時だけしか夏海の話は出ていない。

愛しい真央の方に目を向けると
息子の海斗を抱いてベランダ越しに風景を見せている。

その横顔は母の顔をしていて自分に見せる顔とは違い慈愛に満ちている。

当たり前だがその顔は自分には決して見せない顔・・
解ってはいるが、海斗にさえ焼きもちを妬く自分は情けない・・

そんな視線を感じたのか真央が此方を見る・・
その眼はさっきのキスで少し潤んでいる・・

「真央、来週の土曜日お袋が海斗と一緒に居たいって・・

だから映画観て、食事に行ってホテルに泊まろう」

「え?いいの?」

「うん。お袋も海斗と一緒に寝たいみたいで・・」

「でも、良いのかな?」

「大丈夫だよ。親父もいるし。ああ見えても母親業していたし」

「じゃあ。お言葉に甘えちゃおうかな」

「見たい映画と食べたい食事リクエストして」

「翔は?」

「俺は真央と一緒だったら何を観ても食べても幸せだから大丈夫。
日頃、仕事に、育児に、家事に頑張ってくれる真央に喜んでもらいたい」

「 有難う」

ぐすんと泣きながら笑うその笑顔は海斗にも見せたくなくて
海斗を抱いているのに自分の胸に抱きよせた。

日常に真央が、海斗がいるここが俺の幸せ。