身代わりでも傍にいたかった


夏海だから油断していた。

今日は女子からの呼び出しは絶対断る事にしていたのに
夏海だから颯真との事で何か相談か?
位の軽い気持ちで付いていった。

人の気配が無い研究棟の中庭で

「翔、初めて会った時から翔の事が好き」

「え、夏海なに言っているの?俺には真央がいる」

「私は高校生の頃から翔が好き。真央と別れて」

「夏海・・颯真は?」

「翔の近くに居たいから颯真に告白されて付き合っただけ。昔から翔だけが好きなの」

「意味がわかんない」

「翔、真央と付き合っているのは私の身代わりでしょ?この間偶然会った翔の友達が言っていた。翔は私の事がずーと好きだって。私も翔の事が好き。ズーと一緒に居たいから同じ会社にエントリーしたの。私達両想いだったんだよ。」

友達だと思っていた夏海から出てくる信じられない言葉に驚くしかなかった

「夏海、誤解している。俺は真央が好きだ」

「嘘、私の事が好きだって。誰とも付き合っていないって翔の友達が言っていた。真央の事隠していたのはそう言う事でしょ?」


「そういう事ってどういう事?俺は真央と付き合っているのを隠していたのは誰にも紹介したくなかったからだヨ。彼女が居るって言ったら合わせろって言われてあいつら騒ぐだろう。真央を晒したくなかったからだよ。」

「え・・真央の事好きなの?」

「好きだよ。初めて会った時から。高校生の時は夏海の事は好きだった。でも、颯真と付き合い始めてからは友達の彼女としか見ていない。それも今は少し揺らぐ・・・・颯真は俺の親友だ。それなのに利用したって聞いたら許せないと思うし、夏海にとって真央は友達の筈なのに真央と別れてと平然と俺に言う夏海に引いている」

「私じゃダメなの?」

「真央との未来は幾らでも想像出来るけれど夏海との未来は想像出来ない。俺、出来た人間じゃ無いから・・このまま夏海と友達関係は構築出来ない。出来れば二度と俺に話しかけないで。俺が決める事じゃないけど真央とも関わらないで。意味わかるよね?」

と自分の思いを口にしてその場を離れようとした時、
夏海が俺の腕を掴む。
今まで何度もあったその仕草、何故か気持ち悪いと思った。
自分でも吃驚するくらい低い声で

「汚い手で触るなよ」

と口から出ていた。

真っ青な顔の夏海の腕を振り払ってその場を後にしてバイトに向かう。

夏海には真央に関わるなと言ったが・・
夏海との事を真央に話すか悩んだ。
俺が勝手に夏海と縁を切れなんて言える立場かと・・
しかも職場が同じになる。
真央が気にするのでは?
と思い話さないと間違った決断をしてしまった。

その日から不自然なほどに夏海を避けた。

颯真とは二人で呑んだりしていたが
基本四人で会うようなイベントは難色を示していた。
多分颯真も何かを感じていたのか深追いをしてこなかったのは有難かった。