その壱


人を疑え。



その弐


人を信じず、己のみを信じる事。



この二つが亡き師匠の教えだ。

そして、生き延びるための術である。


「平和でない、世界なんて消えてしまえば良いのにな。」


そんな、呟きを俺の大好きな梅の花の前で言う。

幸せな世界なんて、やってくる時代は

あるのだろうか。


いや、考えるだけ無駄か。


俺はもう、前みたいには戻れない。


俺自身が殺意に…手を汚してしまった。


この世界は今も、


俺の見ていないところで


人殺しが行われているというのに…


梅の花は綺麗に咲き、ポツポツと小さな存在を放っている。


「お前だけは綺麗だな。」


梅の花に自然と話していた。


すると、

『うふふっ!』


少女の可愛らしい笑い声が聞こえた。


「な、何だ?!」


『大丈夫だよ…!私が連れて行ってあげる。』


「?…どこに?」


『お姉ちゃんがいたいって思う所…!』


「い、いや…俺は…!」


その先を言おうとする前に


眩しい光が梅の花から放たれ


『楽しんで…うふふふっ!』


少女の笑い声と共に


俺はとても優しい光に包まれ気を失った。