カウンターの向こうからは、あの美奈人少年が俺に手招きをしている。

腕の中には、あの赤ん坊のびわたんがいる。

…赤ちゃん、大丈夫なのか?おまえこそ逃げなくていいのかよ!



だが、ガタガタ言って躊躇っている場合ではない。

美奈人に招かれるまま駆け寄り、カウンターの中へと身を収める。

中には、咲哉さんが隅でなぜか小さくなっていた。



「よぉーし!咲ちゃん、今だぞ!」

「あ…うん!」



美奈人がそう指示すると、咲哉さんは頷いて電子レンジ側の目隠しカーテンをシャッと開ける。

中には、液晶画面付きの…スイッチが二つ?



「…オーナー!アラート結界入れますぅぅっ!」



咲哉さんがそう叫ぶと、向こうから「わかった!」と声が聞こえる。

黒い翼の彼と神威さんは、未だあのまま睨み合っているようだ。

電光と黒い羽毛のせめぎ合い。



「咲ちゃん、早く!」

「え、えいやぁぁっ!」



躊躇いを振り切るように、咲哉さんは声をあげ、思い切ってスイッチをパチンと入れる。

スイッチひとつにそんなに気合い必要?

…いや、場慣れしていない咲哉さんには、必要だったのである。気合い。