美頼が【夢殿】として何をしてきたかを、夫や子供らは知っている。

【夢殿】継承で、真っ先に頭に過ったのは、この唯一無二の力を独占したがる者の出現、それによって引き起こされる侵略、戦争の勃発だった。

こんな平和なご時世となったが、未来を予知、選択できる力の存在を知ることにより、どうなっていくかはわからない。

平和なんて、いとも簡単にひっくり返るものなのだ。



それを危惧した橘一族は、陰陽師大和総本山へと赴く。

大和柿乃とは、この総本山の当時の新米総帥であり。

…橘美頼が夢見を放棄して、この総本山に逃げ込んだ際、護衛として美頼を護っていたのは、陰陽師である、この大和柿乃だった。



そして、総帥である大和柿乃は、配下のとある一人の陰陽師に命を下す。



『夢見の最高峰【夢殿】橘頼愛殿の侍衛を命じます』



そんな命を謹んでお受けしたのは、頼愛と同じ歳の少年陰陽師とその一族だった。

総帥の大和一族同様、優秀な陰陽師の家系、鳴海一族の次期当主。

名前を、鳴海赤也といった。