忠晴は、ジャケットをハンガーにかけてそのまま書斎を出て行った。

そこを見計らって口を開く。



「うん、あの…」



……正直、この話を親父にするべきかどうかは、迷った。

でも、じいちゃんはともかく、親父は知っておいた方がいいんじゃないかって思って。



「亡くなった、叔父さんの話…」

「……」



親父は動きをピタッと止める。

そして、徐に俺の方を見た。

まるで、何かを言いたげに。



確かに、ビックリするだろう。俺が生まれる前に亡くなった叔父さんの話など。会ったことないのに、なんて。

……でも、俺は夢の中で。

【夢殿】の記憶の中で、会ってしまったんだ。



度々、俺の夢の中に登場して、必死に語りかけてきた、あの儚げな男性。

彼こそが、先代の【夢殿】。

親父のお兄さんである…橘頼愛。

俺の叔父さんだったのだ。



叔父さんは、高校二年生の時に、部屋の中で眠るように亡くなっていた。

原因不明の心臓麻痺で病死…不審死、ともいえる。



でも、俺は夢の中で真実を知ってしまったのだ。

……これは病死なんかではない。