ここからだいぶ距離の離れた野っ原の入り口には、息せき駆けてくるヤツがいる。

いつものパーカーとショートパンツという部屋着にサンダルという姿で、こっちに向かって走って飛び込んでくる、ヤツの姿が…!

何でここにやってきた!



「な、なずな!」

「花魁女郎蜘蛛とやり合って生きてるだなんて、ホント悪運強いというか?命根性汚いというか?」

「なっ…何っ!」

「…それとも、タナトスの女神にひどく嫌われているのか?…どちらにせよ」



そう言い掛けて、彼の表情は険しくなる。



「…恐ろしい、怪物め」



それは、憎悪が滲み出ているとも、言える。

遠くのなずなへ送る殺気を感じて、咄嗟に叫び掛けてしまった。



「…あいつに手を出すな!手を出したら、さっきの炎でおまえの翼を燃やしてやる!」

「おー恐い。それは本当に困るなぁ。僕死んじゃう」



だが、その表情も、いつの間にかいつもの不気味な笑みに戻っていた。

揶揄われて、あしらわれた感覚に陥る。何なんだ…?



そして彼は、フフッと笑って俺に一言告げた。



「さっきの話だけど…奥の手はあるからね?」

「奥の手…?」